クラシック初心者さん、芸術の秋にこそ聴いて欲しい!⑩〜ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲〜
クラシック曲の紹介も10曲目になりました🤗
本日はフルートのオーケストラスタディにもなっている楽曲です。
ドビュッシー作曲『牧神の午後への前奏曲』です。
フランスの作曲家、クロード・ドビュッシー(1862年〜1918年)が作曲したこの楽曲。
「月の光」や「喜びの島」「亜麻色の髪の乙女」といったピアノ曲をご存知の方も多いでしょう。
彼の作曲の特徴などから「印象派」と称されることも多いドビュッシーですが、
本人はそう呼ばれることを嫌がっていたそうです。
というのも、この「印象派」という言葉自体がモネの『印象・日の出』という絵画作品に由来している揶揄表現であり、
音楽における「印象派」も、若手作曲家への揶揄的な意味合いが込められていたからです。
さて、この「牧神の午後への前奏曲」の作曲には詩人・マラルメの存在があります。
『牧神の午後(半獣神の午後)』という作品に感銘を受け、作曲されました。その内容は、
夏の昼下がり、好色な牧神が昼寝のまどろみの中で官能的な夢想に耽る
というものです。
牧神というのは古代ギリシャ神話に登場する、山野や牧畜をつかさどる神様のこと。
ギリシャ神話では「パン」と呼ばれ、山羊の角と脚をもち、半分人間で、半分が獣の姿をしています。
そして「パンの笛」と呼ばれる笛をトレードマークとしています。
まず、この「パン」は大の女好き!
毎日のように森や川にいる妖精や女神たちを追いかけ回しています。
ある日、パンはシランクス(シュリンクス)という美しいニンフ(森や川にいる精霊)に出会います。
女好きのパンはこのシランクスのことも例外なく追いかけ回すのですが、シランクスは怖くて逃げ回ります。
ですがとうとう川辺にまで追い詰められてしまい、逃げ場を失ったシランクス。
彼女は神に助けを求め、間一髪のところで川辺に生えている葦に姿を変えてもらいました。
シランクスを失って悲しみに暮れたパンは、川辺の葦で笛を作り、それを肌身離さず持ち歩きました。
これが「パンの笛」の由来です。
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「牧神の午後への前奏曲」はこの「パンの笛」をイメージする楽器としてフルートが大活躍!
大活躍どころか・・・冒頭たったひとりで息の長いソロを吹かなくてはなりません。
これが本当に苦しいし、緊張する😭💦笑
このフルートソロはド♯から始まるのですが、この音が楽器の構造上めちゃくちゃ不安定な音なんです。
右手の小指しか押さえないという運指なのですが、
フルートにおいて右手の小指はキイを押さえることによって、連動している別のキイが開くというシステム。
つまりこの音ではフルートのほぼ全てのキイが開いた状態ということ。
リコーダーにおいて指穴を一切塞がない状態を想像してもらえるとわかりやすいのではないでしょうか。
ドビュッシーはこの不安定な音を逆手にとって、まどろみや気だるさを表現しようとしたのだと思うと恐ろしい…!
ちなみにこの曲はニジンスキーの振り付けでバレエにもなっています。
バレエの初演はとある理由で当時大スキャンダルになっているのですが…気になる方はGoogle先生をご覧ください(笑)
詩の設定では夏の昼下がりなのですが、この非現実的な浮遊感は芸術の秋にぴったりなのではないでしょうか。
10分強と短めなので、ぜひコーヒーのお供にお楽しみください!